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シンポジウム「東京都葛西臨海水族園の長寿命化を考える」2019.12.19

2019.11.19up

葛西臨海水族園は、1989(平成元)年のオープン以来5,500万人を超える人が訪れ、今や東京都の貴重な文化・リクリエーション施設となっている。

しかしながら、現在東京都は既存の施設から水族館としての機能を無くすことを前提に、新しい施設の建設を進めようとしている。
既存施設の取り壊しの可能性を強く予見させる計画である。

東京都は 2017 年より「葛西臨海水族園のあり方検討会」を開催し、2019 年 1 月に「葛西臨海水族園の更新に 向けた基本構想」の報告書を発表した。
その報告書を根拠に、現在新たな水族園(新施設)の建設に向けた「葛西臨海水族 園事業計画検討会」を開催し、今月末にその結論を出そうとしている。
今日まで既存施設についての議論が全くなされないまま、都は新施設の展示計画や設計・運営の発注方式を年度内にまとめようとしている。

基本構想には「既存施設とは別に建築する建物(新施設)に水族園機能を全て移すことを基本とした検討」をし、「既存施設については、水族園機能を移設後、施設の状態等を調査の上、そのあり方について検討する」と記されており、既存施設から水族館機能を全て取り除くことを明言し、状況によっては既存施設を取り壊す可能性を示唆する内容となっている。
東京都の委員会において今日に到るまで既存施設についての議論が全くなされないまま、新棟ありきで計画を進めようとしている都の計画策定方法には見直しが必要である。

現水族園は機能的・構造的にも、また設備の更新についても今後の活用に充分に耐えられるように設計されている。
それゆえ、既存建築の長寿命化を検討していくことが先決であり、その上で、改修や増築の可能性を議論すべきである。
すなわち既存水族園について 建築的・文化的価値を論じ、その健康度を再調査した上での、将来を見据えた既存施設のあり方と大水槽を有する新棟の必要性とその相互の連携、将来に向けたサステイナブルで健全な水族館施設の運用方法の検討が必要であると考えられる。

本建築は現代日本を代表する建築家の一人である谷口吉生(1937-)の設計による名作である。
『90 年以降 の水族館の展示手法や建築空間においても格段に質が向上したのは、葛西臨海水族園の出現によるところが大きい』と高く評価され、まさにターニングポイントになった水族館である。
この建物の有する文化的及び水族館的価値について改めて考え、建築の長寿命化を考慮した適切な公園の 整備計画の策定を検討いただきたく、「葛西臨海水族園の長寿命化を考える」と題して緊急シンポジウムを実施することになった。

多くの方にこのシンポジウムに参加していただくことを望む。

       記
シンポジウム「葛西臨海水族園の長寿命化を考える」
主催 一般社団法人 日本建築学会、協賛 日本建築家協会
日時 2019 年 12 月 19 日(木)13:00〜17:00
会場 建築会館ホール(東京都港区芝 5-26-20)
http://www.aij.or.jp/jpn/symposium/2019/191219.pdf
申し込み
https://www.aij.or.jp/event/detail.html?productId=625213

村松基安(苗S55)