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2023/7/7ー8/2 長谷見雄二名誉教授「木三学」火災実験 写真展

2023.07.05up

2012年2月につくば市の国総研敷地で木造三階建て学校(木三学)火災実験(予備実験。3回の実大実験の最初のもの)を行いましたが、その撮影記録をお願いした写真家・川辺明伸氏が、この時の写真で構成する写真展を外苑前のギャラリーで開催することになりました。案内を添付致しますが、会期は7月7日~8月27日ですので、是非ともご覧頂ければ幸いです。
会期:7/7(金)~8/27(日)
   10:00~18:00(8/26・27を除く土日は基本お休み)
会場:PRISMIC GALLERY

なお、実大火災実験がどういうものであるか、一般にはあまり理解されていないことも考慮して、展示に添える「寄せ書き」を用意しました。
長谷見雄二(苗1973)

「寄せ書き」
「木三学」に寄せて 長谷見雄二(早稲田大学名誉教授、木三学実験実行委員長)
建物の中で始まった小さな火事が次第に大きくなって、炎に包まれた建物が崩れていく。
火事が始まる前から建物が崩れるまでの一部始終を見るような機会は、消防士にもないだろう。
これが実大火災実験で、日本では、木造でそれまで許されていなかった規模・構造の建物を建てられるようにする法改正が検討される際にはほぼ必ず行われてきた。
そういう建物で火事になった時、どんなことが起こるかを確かめ、必要な対策を法令に盛り込むためである。
当然、柱や壁等の部材レベルの実験は実験室で行われているのだが、部材の実験結果を集めればそれで建物全体が火災でどうなるかわかる、というものでもないのである。
最近の法改正で3階建て以上の色々な建築が木造で建ち始めているが、この法改正の検討段階の2012~13年の間に3階建て木造学校の火災実験が3回、行われた。
本展は、その最初の実験を写した写真で構成されているが、それ以前の実大火災実験のほとんどは住宅や集合住宅を想定したもので、学校のように大規模な木造建築物の火災実験は世界的にも例がなかった。
建物は、当時の法令では耐火構造としなければならなかった3階建て学校を木造の1時間準耐火構造でつくり、内装のほぼ全体を木質化したもの。集合住宅レベルでは、これで避難・延焼防止の観点から安全性が確認されている。
本実験は、一言でいえば、その範囲で木造化を限界までやってみて、大型居室・大スパンの大規模建築を木造化する場合の防耐火上の課題を洗いざらい明らかにし、その後の研究開発の手掛かりにしようというものである。
川辺さんの写真を今、見直すと、実験当日早朝からの緊張感、予想を超える点火後の経過への実験チームの慌しい動きとそれでも冷静に続けられた観察・記録の記憶が鮮やかに蘇る。防災は、人知を超える自然に向かい合う取り組みであることを再確認させられる展示である。