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No.197≪2020.9.18≫

2020.09.29up

【稲門建築会メルマガ】No.197≪2020.9.18≫
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窓開け換気を積極的に行うことで、室内でもその暑さが殊に感じられた今年の夏が
終わりの気配を感じさせる季節になりました。

研究室での活動は、感染状況に加え、その目的や性質によってリアルとバーチャルを
使い分ける選択の時期に入っていると感じます。
10/15に発刊予定のNews of WASEDA Architectureでは特集「コロナと教育」と題して、
各先生方に研究室や授業での様子を伺っておりますので、是非ご一読ください。

さて、毎日の感染者数が大きく報道されることも少なくなった今ではありますが、
依然として存在する新型ウイルスの脅威に決して油断することなく、
新たな日常に向かいましょう。

広報学生委員 新田竜(田辺研究室 修士1年)
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00≪コンテンツ≫
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01≪亀井忠夫氏インタビュー「これからの建築・都市の在り方」「これからの建築の仕事」≫
02≪田中辰明氏著作紹介≫
03≪こちら事務局≫

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01≪亀井忠夫氏インタビュー「これからの建築・都市の在り方」「これからの建築の仕事」≫
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今月号より、インタビュー企画がスタートします。
コロナ禍で大変な今、業界の第一線で活躍する方々は何を思うのか、お話をお伺いする企画です!
記念すべき第1回目は、稲門建築会副会長で株式会社日建設計代表取締役社長 亀井忠夫氏に、
実際に会社にお伺いし、インタビューしてきました。
それに伴って、今月号にはインタビューに関する写真が添付してあります。
ぜひご覧ください!

■オンライン化で改めて考えること…「モノ」を扱う建築の仕事
私たちの建築の仕事は、オンラインで対応できることもありますが、
対応できずに不便さを感じるところがあります。
逆にオンラインで対応できないこと、つまり「モノ」に関わっているということが、
私たちの職能のコアなところではないかと感じます。
COVID-19の状況下において、エッセンシャルワーカーという言葉を
よく耳にするようになりました。
社会生活を支える仕事をしている人の意味で使われていると思いますが、
建築は社会生活に欠かせない社会インフラであり、
人々の生活を支え、さらに文化をつくる。
それを創っていく仕事はエッセンシャルです。
バーチャルだけで建築が成り立つわけではありません。
実空間があり、それを構成する構造体や素材があってこそなのです。
建築の仕事の意義を改めて考えるきっかけになりました。
また仕事に取り組む中で、模型の大切さも改めて感じました。

■これからの建築・都市のあり方
今回さまざまな気づきがありました。
新型コロナウィルスや自然災害のように突然降りかかってくるものがある。
なかなか難しいことではありますが、
いつ降りかかって来るかわからないことがあるということを、
当たり前だと思って備えていることが、建築、都市のハード面でも大事だと思います。
かつて遷都の議論がありましたが、結局実現しませんでした。
首都を移すのでなく、デュアルとかトリプルに首都を構えてバックアップを図るといえば、
賛同する人も多かったのではないかと思います。
他国に比べて、日本は地震、洪水などの自然災害が多いわけですから。
今後の国土計画では、平常時、有事さまざまなモードに対応していけるという視点が大切でしょう。
有事に利用するものを平常時も無駄なく活用できるような考え方も大事でしょう。
建築で言えば、避難階段を裏方に追いやるのではなく、見える位置に設置し、
日常から使いやすい階段として設計するような考え方ですね。
ランドスケープでは、遊水池を運動場に使用するなどというのも一例ですね。
非常時対応のものを隠すのではなく見せることで、非常時を常に意識することもできます。
パブリックスペースも日常の快適性、利便性に重点を置いてデザインしがちですが、
それが非常時にどう使えるかを含めて計画すると、
使う人の意識も高められるのでないかと思います。
また、日建設計のホームページにも書きましたが、
自然と戦うのではなく共存、共生する方向で
開発計画や設計をしていく必要があると思います。
川の氾濫を堤防で力ずくで抑えるのではなく、
信玄堤のように、ある限度を超えると溢れさせて大きな被害を防ぐ。
それに対応してそのエリアの用途設定も考えていくなど。
日本建築には、伝統的に自然と共生していく思想があったと思います。
建築では、住宅をオフィスとして使用したり、
ホテルを病院として使用したりするなど、用途の境目が無くなってくるでしょう。
それに伴って、建築の法律の見直しが必要になることもあるでしょう。
設計者としては、ますます建築主の与件だけではなく、
その先にあることを見据えて提案していく必要があると思いますね。
都市計画の用途地域制の見直しなどという話も出てくるかもしれません。

■「高密度の集中からバランスした分散へ」
これまで、オフィスに朝9時前後に来て一斉に業務スタート、
という働き方が一般的でした。
これはこれで、オフィスにいやでも行く(笑)という規律、
また皆と顔を合わせるということで良い面もあったわけです。
ところが今はCOVID-19のために、通勤することにもリスクがあるので、stay homeの奨励。
この急激なモードの変化によって、対応への戸惑いはありましたが、
通勤のストレスからも解放され、パフォーマンスの上がる働き方を考えるようにもなりました。
個人個人の置かれた家庭の状況やタスクの内容によって、
働き方が選択できるのが良いという方向ですね。
こうなると必ずしもオフィスに来なくても、
自宅あるいは自宅の近くにあるオフィス的なところとか、
さらに休暇を取りながら遠隔地でも働けるんではないか、
などと考えるようになってきました。
これからは個人の意向を尊重するような働き方になっていくでしょうが、
これは個人の自律が求められることでもあります。
このような多様な働き方が可能になると、都市の中心部だけに集まるのではなく、
郊外などにも分散していくでしょう。
そうすると通勤のピークが無くなり、移動の方向も一方向ではなく多様になってくる。
「集中からバランスした分散へ」ということですね。
密度に対する人々の感覚も、この半年でずいぶん変化したのではないかと思います。

■進行中の海外プロジェクトを通して見るこれからの建築
現在、2016年に国際コンペで設計者として選ばれました
FCバルセロナのサッカースタジアム「Futur Camp Nou」の大改修計画を、
現地オフィスで実施しています。
バルセロナは地中海性気候で冬でも温暖なため、
広めに確保したコンコースはすべて外気に開放し、
観客が試合の前後に佇める外部のリビングルームのような空間としています。
これはCOVID-19以前に提案したものですが、
外界へ「開かれた建築」の可能性の一つとして提案しています。

一方、寒冷地であるサンクトペテルブルグの事例です。
北のヴェネツィアと称される水の都、歴史的な街で厳しい景観規制があります。
ここにガスプロムネフチ社というエネルギー会社の本社を計画するコンペが
昨年開催され選ばれました。
低層の建築で内部は葉脈のような有機的なフィンガープランとし、
フィンガーの間がアトリウムになっています。
寒冷地ですので冬期は外皮を閉じていますが、
アトリウムに面したオフィスの窓が開閉して、
オープン~クローズをコントロールできるようになっています。

■学生へのコメント
やはり、私たちは建築や都市という実態のあるものをつくっているわけですから、
フィールドとかモノが大事です。
旅をしていろんなもの見たりとか。感覚やスケール感、素材、場の雰囲気とか、
その場所に行かないとわからないものが多くあります。
でも今はそれがやりにくい状況ですから、想像力を働かせる必要があります。
行けない、見られないもどかしさをバネにして、
想像力を最大限働かせてやってみると良いのではないでしょうか。
かつて私の知人に、想像力を鍛えるためわざと海外には行かない、
という人もいたほどです。(笑)

添付写真
亀井忠夫氏(インタビュー時)、バルセロナ/新カンプ・ノウ計画(Futur Camp Nou)外観、
サンクトペテルブルグ/クリスタル船艇(Crystal Vessel)プロジェクト内観の三点です。
★書籍やweb等への転用・掲載は禁止とさせていただきます。
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亀井 忠夫 (Kamei Tadao)

学歴
1978 ペンシルバニア大学大学院修了
1981 早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了

職歴
1978 HOKニューヨーク事務所 勤務
1981 株式会社日建設計 入社
2006 同上 執行役員 設計部門代表
2012 同上 常務執行役員 設計担当
2013 同上 常務執行役員 設計部門統括
2013 同上 取締役常務執行役員 設計部門統括
2015 同上 代表取締役 社長
現在に至る
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インタビュアー
伊藤丈治(古谷研 修1)友光俊介(有賀研 修1)原田佳典(小岩研 修1)
兒玉謙一郎(苗H02)


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02≪田中辰明氏著作紹介≫
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著書の紹介
田中辰明氏(苗S38)が「ハインリッヒ・チレが描いた労働者階級のベルリン近代史―ヒトラー出現まで」
(電子書籍:アマゾン)を出版されました。
ヒトラー政権を逃れて来日した建築家ブルーノ・タウトは、
1920年代にベルリンに勤労者の為に健康な集合住宅を12000戸建設し、
4つのジードルングが世界文化遺産に登録されました。
本書では、タウトが集合住宅を建設する以前の、ベルリンの労働者家族の住宅と生活が描かれています。

Kindle版 定価 1000円(税込)

詳細URL→https://www.amazon.co.jp/dp/B08GPPPDWB/ref=cm_sw_r_cp_apa_lVSyFb45T0BBC

稲門建築会ホームページの会員からの情報にアップしてありますのでご覧ください。
URL→https://www.toumon.arch.waseda.ac.jp/5347

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03≪こちら事務局≫
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暑さの中にも秋の気配が感じられるようになりました。
緊急事態宣言からあっという間に半年が過ぎました。
4月のコロナの状況では今年度の稲門建築会活動も自粛かと思いましたが、
早稲田の底力で例年より活発になっております。
「災い転じて福となす」まさにこの考えで一同頑張っておりますので
9月からの後半戦にご期待ください。
zoomとteamsは使えるようにしましょう。

事務局長 鴇田 隆(苗S48)

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【稲門建築会メルマガ】No.197≪2020.9.18≫

総編集長 :稲門建築会会長 大内政男(苗S47)
編集責任者:広報委員長 兒玉謙一郎(苗H02)

学生委員:永島啓陽(修2)、坂井高久(修2)
本間菫子(修2)、津田基史(修2)
髙瀨道乃(修2)、前田侃亮(修2)
沖美彩子(修2)、木村一暁(修2)
乙戸理央(修2)、嶋田千秋(修1)
伊藤丈治(修1)、秋山曜(修1)
友光俊介(修1)、新田竜(修1)
後藤佑美(修1)、上田留理子(修1)
魚谷昭太(修1)、原田佳典(修1)

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 稲門建築会  
ALUMNI ASSOCIATION OF WASEDA ARCHITECTURE
 東京都新宿区大久保3-4-1  〒169-8555
 早稲田大学55号館S棟2階
 TEL&FAX 03-3208-0640
 E-mail wap@toumon.arch.waseda.ac.jp
 http://www.toumon.arch.waseda.ac.jp/
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