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2011年度 稲門建築会の活動予定

2014年度の活動

3/21(土) 新宿東宝ビル見学会のご報告

3/21(土) 新宿東宝ビル見学会のご報告

3月21日、今週末竣工予定の新宿東宝ビルの見学会がおこなわれました。今回は卒業生44名、学生9名の計53名が参加しました。歌舞伎町の真ん中から建物が立ち上がっていく姿を見て、見学することを楽しみにしておられた方も多くいらっしゃったのではないかと思います。

 見学会では、ホテルの客室、映画館、8階屋外テラス内ゴジラ頭部、ホテルロビー、1階の商業施設など、一通り回らせていただきました。
歌舞伎町の正面から迎えるゴジラの頭、ポスターや貴重なレプリカに囲まれたゴジラルームなど、ゴジラのコンセプトが色濃く出た建物という印象を受けました。

 歌舞伎町は私自身にとっても大変興味をひかれる場所で、中低層の建物が立ち並ぶ、妖しげな雰囲気に独特の魅力を感じていました。これから幅広い人々に向けた当見学建物ができることで歌舞伎町はどう変わっていくのか、なんとなくそわそわさせられる気持ちです。

 最後に、ご案内頂いた竹中工務店のみなさまに心よりお礼申し上げます。

(事業委員会学生委員 陶山春菜)

2/21(土) としまエコミューゼタウン(南池袋二丁目A地区第一種市街地再開発事業)見学会のご報告

2/21(土) としまエコミューゼタウン(南池袋二丁目A地区第一種市街地再開発事業)見学会のご報告

2月21日、今月初めに竣工した、としまエコミューゼタウンの見学会が行われました。
 今回は参加人数の限られた見学会となりましたが、学生7名、OB22名の計29名が参加しました。

 当日は本建物を象徴する庁舎部の吹き抜け空間(エコヴォイド)や屋上庭園(エコミューゼ)などの共用部を中心に見学させて頂きました。
 緑に溢れた外観が印象的な本建物ですが、建物内もエコヴォイドによって光が多く採られており、明るく居心地の良い、新しいかたちの庁舎であるという印象を受けました。

 最後に、建物コンセプトや工事概要の説明と、建物内の案内をして頂きました日本設計、大成建設のみなさまに心よりお礼申し上げます。

(事業委員会学生委員 陶山春菜)

12 月15日(月) 2014年度シンポジウム企画『「早稲田建築」の覚醒 パート2』のご報告

12月15日、理工キャンパスにて、『「早稲田建築」の覚醒パート2』と題し、パート1と同様に中川武氏進行の、吉村靖孝氏、海老原靖子氏、光嶋裕介氏によるシンポジウムが行われました。参加者は学生27人、OB・OG17人でした。

今回は、前回の議論を踏まえ、パート1の世代よりさらに若い世代、また今建築家として増えつつある女性からの視点も加えてお話、議論を進めていただきました。世代が変わればその時代背景や状況も変わり、価値観も変わります。その中で早稲田建築というカテゴリーは意味を持つのか、持たないのか。

前半にパネリスト3者の講演、後半に中川先生進行のディスカッションが行われました。

吉村氏はご自身の作品の中からNowhere but SajimaやC.C.House、House Makerと「アプリの家」などを紹介されました。その中で、建築主の会社立ち上げから携わること、建築の著作権を一部解放して図面を共有することに取り組んでいることのお話がありました。アプリの家は、画面のなかで部材を移動・素材感など選択してユーザーが自分でつくりたい家のイメージを作ることができるアプリケーションを使ったプロジェクトです。これにより、建築家が関わる領域を小さく、完成形にユーザーがかかわる領域をできるだけ大きくしているそうです。
これらのお話を通して、吉村先生は「非覚醒の時代」ということを強調されました。

 海老原氏は入江研究室の一期生で久米設計に所属しています。海老原氏は多くの人が訪れる建築を設計したいと思い大手設計事務所に就職したそうです。海老原氏が主に関わった建物として雲仙岳災害記念館、赤坂サカス、理工キャンパス63号館、早稲田本部キャンパス3号館がありますが、すべてが多くの人に使われるものであり、それぞれどのようにして人々が使うか、何を多くの対象者に伝えたいのかを明確にして設計されていました。
また、他の2人の方に対して海老原氏は集団で設計していますが、自分の名前が出ないことにもどかしさは感じていないそうで、「自分を理解してもらえるような環境をつくれば自分らしさは出せる」と力強く語っておられました。

 光嶋氏は石山研究室出身で、現在個人で設計されています。修士2年間を石山先生の自宅で過ごし、勉強したそうです。主な作品のひとつである内田樹自邸では、家のスペースの他に寺子屋のような会議スペースや道場が1階部分にあり、プライベート・セミパブリック・パブリックに分けられています。道場の畳をめくると能の舞台になるしかけがあり、そこではかるたや書道など、設計時に意図しなかった使われ方もしており、臨機応変に使う人によって場を作り変えることができているそうです。このほかにもプロジェクトに関わっていくなかで関係者に依頼された個人邸などたくさんの作品を作られていますが、仕事はそういった普段の周りの人とのかかわりの中で生まれていくそうです。都市全体として、人間の生活として建築を考えたとき、どうひとつのものとしていくか。
「建築家はものごとを上から俯瞰する神的視点でありながら、自分自身も社会のプレイヤーでなければならない」、「両義性」が必要であるとおっしゃっていたことが大変印象的でした。

早稲田建築を分析する際に、現在比較対象としてわかりやすいのは東工大ではないかと吉村氏はディスカッションの冒頭で話されました。ドローイングにおいて東工大は(図面を)立体的に見せる影がつかず工学的であり、アクティビティの表現もそれぞれの行為そのものに焦点をあてている、それに対して早稲田はドローイング全体に影をつけ、時間がわかり、材料や質感、人の気配や空気感までも描いている、と。これはたしかに学生の作品の中でも見られる早稲田建築の特徴です。また中川先生はパネリスト3者の取り組みに対して、「三者三様ではあるが、三者ともとても強い『個』として集団を動かしている」とまとめておられました。
それは私個人としてはとても納得のできることで、早稲田建築の「空気をも表現してしまう程の繊細な感覚」が、実体として社会と結びつき、さまざまなものを動かしているのではないか。時代の流れの中で変わってきた価値観はいま、個が個として表れるよりも、都市や集団、亜周辺といったものと関わりながら表れてくる早稲田建築になっているのではないか、と感じました。

難しい議論でしたが、それぞれの先生の一番強い主張には何か、今の早稲田建築を語るヒントになるものが潜んでいるように思います。今回会場にいらっしゃることができなかった皆様も一度、早稲田建築というものを考えてみてはいかがでしょうか。
貴重なお話をしてくださった中川氏、吉村氏、海老原氏、光嶋氏、そして参加者の皆様に心よりお礼申し上げます。

(稲門建築会事業委員 学生委員 藤井真麻)

12/13 (土) 実践学園自由学習館 見学会のご報告

12/13 (土) 実践学園自由学習館 見学会のご報告

12月13日午後12時30分より、実践学園自由学習館の見学会が行われました。参加者は学生15名、OB48名、合わせて63名でした。前半にひな壇状のホールで八木佐千子氏によるレクチャーがあり、その後館内を見学させていただきました。
レクチャーでは、「学校を住まいに、教室をまちに」という自由学習館設計のコンセプトから始まり、それに基づきどんなことを工夫されたか、またどのように苦難を乗り越えたかなど、各専門の先生からのエピソードを交えてお話していただきました。

 実践学園の校舎が中野区の閑静な住宅街の一角にコンパクトにまとまっていますが、自由学習館はその飛び地にあり小さな公園に隣接しています。レクチャーの中で、緑の見える環境と4層吹抜けにこだわったとお聞きしました。お話の通り、開口の位置の工夫により館内のどこにいても外の木々の緑が目に入り、葉が反射する光を感じられるようになっていて、建築内部の地下から3階までの4層吹抜けと空間が連動し非常に開放的でした。都心の小さな敷地ですが、そこにある自然―緑から始まり空、光、風―、また人の声や気配までも最大限に生かし、空間に取り込んでいることがこの建築の核であると思いました。
そのような空間に漂うものを感じながら椅子に腰掛け空間にとどまってみると、非常に落ち着いた気持ちになりました。見上げてみると、天井には照明が無く、やわらかな光が当たっています。屋根は周囲の住宅との関係を考え中心に向かって高く傾斜を組み合わせたような形ですが、この屋根の形を生かし、天井に下から照明をあてて灯りとしていることが、自由学習館全体を包み込む空間性を与えていました。

この建築は、設計に古谷教授、八木氏、構造設計に新谷教授、設備設計に高間氏、竣工後のアドバイザーとして田辺教授と、早稲田出身の先生方の力が結集したものです。学生の視点から見ると、早稲田建築のグループ課題においての各自の役割がプロになっても続いていき、個々の専門性が向上するにつれできるものも素晴らしいものになるのだと感じさせてくれるものでした。
また、実践学園には元々コミュニケーションデザインという授業があり、その授業のなかで自由学習館をどのように使いたいかというワークショップを行ったそうです。これは単に皆で決めるというだけではなく、建築が竣工して使われ始めたとき皆に愛されるようにするためと八木氏はおっしゃっていました。実際に現在も生徒に愛されているようで、土曜日にもかかわらずたくさんの生徒が勉強していました。土日の開館にあたり、実践学園の卒業生がチューターとして実践学園に関わり続けていることも、この建築の力であると感じます。

 
外から色々なものを取り込んで、内部で隔たりをつくらず全体を包み込む、まるで家庭のリビングにいるような安心感はこのようなことから生まれているのだと、深く理解することがきました。

 今回この自由学習館を見学させていただき、また、設計に携わった先生方に丁寧に解説していただいたことで、会場に足を運んでくださった会員の皆様にとっても有意義な時間になったと思います。貴重な機会をくださった古谷教授、八木氏、NASCAの皆様、そして参加者の皆様に心よりお礼申し上げます。


(事業委員会学生委員 藤井真麻)

12/20~1/7 事務局冬休み

稲門建築会事務局は12/20(土)より1/7(水)まで冬季休業期間となります。

稲門建築会は本年も会員の方々に支えられ活発に活動を続けてこられました。
ありがとうございます。
2015年もまた、ご協力よろしくお願いいたします。

みなさまどうぞ健やかに新年をお迎えください。

事務局一同

12/13 (土) 実践学園自由学習館 見学会のご案内

12/13 (土) 実践学園自由学習館 見学会のご案内 
 (2013年度 JIA日本建築大賞受賞/2013年度 日本建築学会作品選奨)
  【日時】12月13日(土) 12:30~14:00
               ※集合時間・集合場所は参加決定者にご案内いたします

【設計者】古谷誠章 +NASCA /構造設計 新谷眞人 /設備設計 高間三郎
  【施工者】大成建設
  【所在地】東京都中野区中央 2 丁目 38 番
       (東京メトロ丸ノ内線「中野坂上」駅/都営大江戸線・JR「東中野」駅 徒歩10分)

■ 申し込み方法
  【申込】稲門建築会事務局へ電子メールにてお申し込みください。toumonji@poppy.ocn.ne.jp
     ※氏名・OBか学生か・携帯電話(固定電話)を明記
     ※稲門建築会年会費納入が必須。
      未納の方には見学会までに払込をお願いたします。
  【参加費】OB/500円、学生/無料
   【締切】12月10日(水)
【定員】50名/先着順

12月13日(土)に実践学園自由学習館の見学会を開催いたします。
実践学園は東京都中野区にある中高一貫校であり、図書館とフリースペースを一体化した施設として、古谷誠章+NASCAによって設計されたのが自由学習館です。2011年3月に竣工し、2013年度日本建築大賞を受賞しています。これまでの実践学園校舎群が市街地の限られた敷地の中で学校機能がコンパクトにまとめられているのに対し、自由学習館は校舎内のゆとりの空間や時間を集約的に生み出すように設計されました。毎日満員電車通いの生徒達が気持ちをリフレッシュできるよう館内のどこにいても緑が望めるようになっていること、そこにいる人の互いの活動が身近に感じられるよう地下から3階までひとつながりの吹抜けとなっていることなど、様々な工夫がされています。生徒が自由に滞在、活用できる実践学園のなかの「ハウス」の空間といえる場所です。
自由学習館は普段の見学はできませんので、皆様、この機会に一度「ハウス」の空間をご覧になってみてはいかがでしょうか。


(事業委員会学生委員 藤井真麻)

2014年度シンポジウム 企画 早稲田建築」の覚醒 パート2

2014年度シンポジウム企画
『「早稲田建築」の覚醒 パート2』
日時:12月15日(月) 18:00~
開催場所:早稲田大学西早稲田キャンパス57号館201教室
参加方法:申し込み不要。参加費無料。

12月15日(月)に『「早稲田建築」の覚醒 パート2』と題しまして、中川武氏を進行役とし、吉村靖孝氏、海老原靖子氏、光嶋裕介氏による講演とディスカッションで構成されるシンポジウムが行われます。
多くの皆様のご参加をお願い申し上げます。
(事業委員会学生委員 片田江宏美)

【シンポジウム内容】
■第一部講演(70分):
「現代日本社会において建築は何をすべきか」
歴史的観点を踏まえ、自らの仕事などを通して上記テーマを語っていただく。
(20分/人)

■第二部パネルディスカッション(80分):
中川武氏を進行役として一部の講演内容を踏まえたディスカッション。

■パネリスト(敬称略):
○中川武(なかがわ たけし)/早稲田大学教授・・・(進行)
1994年よりバイヨンを中心としたアンコール遺跡の保存修復と広域遺跡調査(JSA団長、JASA共同代表)
1991年よりベトナム・グエン朝フエ王宮復原調査(ユネスコ・フエWorking Group)
2011年より早大東日本大震災復興研究拠点(自然文化安全都市研究所長)
2014年7月より博物館明治村館長

○吉村靖孝氏(よしむら やすたか)
1997年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。1999年〜2001年MVRDV在籍。2005年吉村靖孝建築設計事務所設立。2013年〜明治大学特任教授。
主な作品に、窓の家、中川政七商店新社屋、Nowhere but Sajima、ベイサイドマリーナホテル横浜、鋸南の合宿所、中川政七商店旧社屋増築など。
著書に「ビヘイヴィアとプロトコル」、「EX-CONTAINER」、「超合法建築図鑑」など多数。

○海老原靖子(えびはら やすこ)
1996年早稲田大学理工学部建築学科卒業。
1998年早稲田大学大学院修士課程修了、久米設計入社。
現在、同社で建築設計部上席主査。
主な担当プロジェクトに、
赤坂サカス、早稲田大学西早稲田キャンパス63号館、早稲田大学早稲田キャンパス3号館など。

○光嶋裕介(こうしま ゆうすけ)
2004年早稲田大学大学院修士課程修了。ザウアブルッフ・ハットン・アーキテクツ(ドイツ)を経て2008年に光嶋裕介建築設計事務所設立。2012年より首都大学東京都市環境学部助教のほか、桑沢デザイン研究所および大阪市立大学で非常勤講師をつとめる。
主な建築作品に《凱風館》、《祥雲荘》、《如風庵》などがある。
主な著書に『みんなの家。〜建築家1年生の初仕事〜』、『建築武者修行—放課後のベルリン』などがある。

【開催主旨】
・・・・・・稲門建築会に集まる私たちの中心には「早稲田建築」があります。

「早稲田建築」は早稲田大学に関係する建築関係者が目指す建築の総称です。勿論多様な考えがあると思いますが、大学名を冠にした建築を建築界の潮流として標榜する事例は他大学では、あまり考えられない、ということから私たちは考えたいと思っています。
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前回パート1(9月16日)では、中川武教授の進行のもと第一線で活躍されている内藤廣氏、亀井忠夫氏を迎えて議論しました。そこでは、東大と早稲田、国家と個人という二項対立が鮮明になっていた時代の中で建築を学び志した世代から、早稲田建築はモダニズムの浸透の中で、「人間から、暮らしから、建築を考えてきた」健全な野党のような立場であり、早稲田という方法かもしれない、また多様なパーソナリティを受容することが早稲田らしさであり、「自由さや対応力」のある若い人材に期待するという視点が示されました。
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パート1は早稲田建築を強く体現してきた吉阪先生、安東先生などの先生方に直接接してきた世代の方々の視点でしたが、パート2はその世代よりさらに若い世代、また今建築家として増えつつある女性からの視点も加えて議論をしたいと考えます。世代が変わればその時代背景や状況も変わり、価値観も変わります。その中で早稲田建築というカテゴリーは意味を持つのか、持たないのか。
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今回は、前回の議論を踏まえて、進行役は同じく中川武教授にお願いし、吉村靖孝氏、海老原靖子氏、光嶋裕介氏を迎えて議論を進めます。

11/17(月) 桂純二氏講演会のご報告

11月17日(月)18時より、大成建設の元東北支店長として現地対策本部長を担った桂純二氏による講演会が開催されました。講題は「東日本大震災―復興に係る建設業界の取り組みとその問題点―」として、現場でしかわからない震災の状況と復興への課題について話していただきました。今回は東日本大震災に関する話題であったため、OBの方や早稲田の先生方に加えて、学部を越えた学生の参加が多く見受けられ、参加者は142名でした。

はじめに、東北地方の震災復興の現状と建設業界の状況について、震災当日の映像資料や施工現場の写真を用いて紹介されました。
その中でも、瓦礫処理に関しては自治体の対応が追い付かず、人材不足も重なり、ゼネコンへ発注が集中したと述べられました。
特に、気仙沼の現場にて「人間の手仕事」によって瓦礫の選別が行われている様子を紹介された時、技術の発展した現代においても、最終的には原始的な手法が用いられるというお話が印象的でした。
他にも、福島第一原発におけるゼネコンの職能や、三陸復興道路整備事業で合計183kmを10年で完了させること等、ゼネコンが東北地域に果たす役割の大きさを伺うことが出来ます。

質疑では、震災から3年8ヶ月が経ち、復興事業を経験された上で捉える課題点について述べられました。
一点目に、多主体の意見・利害関係の集約が困難のため、明解な指揮者が必要であること。二点目に、既存の法整備が複雑であること。そして、三点目に多業種間のコミュニケーションが取れないことをあげ、復興を一括で行うためには、市町村間を越えて強引に住宅や施設をつくる程の改革が無いといけない、と我が国の抱える問題点を指摘されています。
桂氏は「私自身、非常に疑問を持ちながら事業を担当していました」と述べられているように、
津波常襲地域であることや原子力発電所事故の教訓を忘れてはならず、それらを建築として継承していく術が、私たちに求められているのではないでしょうか。

最後に、「建設業は非常に面白い」と述べられています。
それは、国土の開発を行う上で必要不可欠だとする、私たちの職能と役割を物語っております。
桂氏の言葉は、震災復興事業という特異な状況を経た上での強く響くメッセージでした。

私たち学生はプロジェクトや活動等で被災地に関わることはありますが、除染や瓦礫撤去といった最前線の業務を担うゼネコンについて知る機会は、大学内ではまずありません。
本講演会は、学術的な内容ではなく、現地で実際に建設を行っている方の声を聞ける貴重な機会でありました。
どうしても、世間の注目がメモリアルやコミュニティを重視したプロジェクトに偏る中で、インフラの復興を担う生々しい手仕事の現状を知れたことで、非常に刺激的な講演会となりました。

(事業委員会学生理事 内田将大)

◆11/1(土)・2(日) 【20の建築家展 】のご報告

11月1日(土)、2日(日)の理工展にて、早稲田を卒業した著名な建築家の作品・図面を収集し、見開きA2版の大きさに装丁した「稲門建築ライブラリー」の図集を、一般公開しました。
今回は実験的に公開を行いましたが、予想をはるかに上回る大好評で、2日間で延べ712名が本展示にいらっしゃいました。
特に、稲門建築会OB・OGの方々の訪問が多く、様々なご意見・ご提案を頂くことが出来ました。
お足元の悪い中、ご来場いただきありがとうございました。

現在閲覧不可である稲門建築ライブラリーの公開方法を検討することを目的とした、来場者アンケートでは、
「勉強になる資料ばかりだから、建築学生にとって身近な場所に置いて欲しい」
「電子アーカイブ化されれば、必要な箇所を印刷して閲覧できるので大変ありがたい」
「大学の授業との連携による閲覧については、1年生向けの授業で実験は容易だと思う」などの意見を頂きました。
ここで、見開きA1の紙媒体としてのライブラリーの価値を残しながら、
デジタル化による利便性を高めることが、喫緊の課題であると見受けられます。

今後は、本アンケートの結果を受けて事業委員会学生委員から提案を行い、
稲門建築会の長年にわたる蓄積を次世代に繋げていく方法を考えていきたいと思います。
(事業委員会学生理事 内田将大)

「建築のこころ アーカイブにみる菊竹清訓展」

「建築のこころ アーカイブにみる菊竹清訓展」のお知らせ

早稲田大学(古谷誠章研究室)は文化庁から受託し、昨年度から建築家菊竹清訓(1928−2011)
に関する建築資料の概要調査ならびに展示業務を行ってまいりました。本展覧会は概要調査を
踏まえ、学生時代のスケッチから晩年の構想に至るまでの今まで未公開のメモやスケッチなど
の大変貴重な資料を数多く展示します。

また、2014年11月30日(日)には大隈記念講堂にて展覧会記念シンポジウムを開催いたします。
展覧会開催中、毎週土曜日午後には元所員の方々によるゲスト・トークや、建築資料館・早稲
田大学によるギャラリー・トークが開催され、多くの企画がございます。

皆様お誘い合わせの上、どうぞ展覧会にご来館ください。

●展覧会概要
建築のこころ アーカイブにみる菊竹清訓展
【日時】2014.10.29(水) —2015.2.1(日)
【開館時間】10:00—16:30
【休館】 11.1(土)/ 12.29(月)—1.3(土)
【会場】文化庁 国立近現代建築資料館
〒113-8553 東京都文京区湯島4-6-15
【ホームページ】http://nama.bunka.go.jp/kikak/kikak/1410/

【入場方法】
○展覧会のみ観覧(平日のみ):事前申し込みの上、湯島地方合同庁舎正門よりご入館できます。
申込み詳細はHPをご覧ください。入館無料。

○都立旧岩崎邸庭園と同時観覧:都立旧岩崎邸からもご入館できます。(事前申し込み不要)
旧岩崎邸庭園(一般)400円が必要です。

【主催】文化庁
【協力】株式会社菊竹清訓建築設計事務所、公益財団法人東京都公園協会
【制作協力】早稲田大学、菊竹清訓展実行委員会


●展覧会記念シンポジウム「菊竹清訓の建築のこころをめぐって」
日時|2014年11月30(日) 13:00-16:15
会場|早稲田大学 大隈大講堂(東京都新宿区戸塚町1-104)
◎Session1 「菊竹清訓のこころ」 13:00-14:30 
◎Session2 「現代・未来への挑戦」14:45-16:15 
出演者|伊東豊雄、内藤廣、中谷礼仁、原田敬美、古谷誠章、穂積信夫、松隈洋
出演者は都合により変更する場合がございます。詳細はホームページでご確認ください。
入場方法|当日先着順(定員:1200名)
問い合わせ先|早稲田大学創造理工学部建築学科(担当:斎藤信吾)
exhibition@furuya.arch.waseda.ac.jp


●ゲスト・トーク/ギャラリー・トーク
会期中に菊竹清訓建築設計事務所元所員によるゲスト・トークや、資料館のスタッフ、早稲田
大学の担当者によるギャラリー・トークを実施します。

2014年11月15日(土)14:00-15:00 遠藤勝勧氏によるゲスト・トーク
2014年11月22日(土)14:00-15:00 主任建築資料調査官によるギャラリー・トーク
2014年11月29日(土)※翌日シンポジウムのためゲスト・トーク等はなし
2014年12月06日(土)14:00-15:00 早稲田大学古谷誠章研究室によるギャラリー・トーク
2014年12月13日(土)14:00-15:00 原田敬美氏によるゲスト・トーク
2014年12月20日(土)14:00-15:00 長谷川逸子氏によるゲスト・トーク
2015年以降は近現代建築資料館ホームページ上で更新予定
【ホームページ】http://nama.bunka.go.jp/kikak/kikak/1410/notice.html


● みどころ
建築家菊竹清訓は、生涯を通じてその代表的な論考「代謝建築論」を礎に置いて、精力的な建
築活動を行ない、東日本大震災のあった2011年の12月に、享年83歳で他界しました。日本から
世界へ向けて発信され、大きな影響力をもったメタボリズムグループの建築家の、中心的なメ
ンバーの一人として、今日なお注目され続けています。

その活躍した時代は、第二次世界大戦後の復興に始まり高度経済成長を迎え、東京オリンピ
ックや大阪万博が開催されるなど、日本の戦後近代の顔がつくられてきたともいえます。

奔流のように流れ込む海外からの文化が国内に浸透し、生活スタイルも大きく変化する中で、
菊竹は日本人としての誇りや日本文化のアイデンティティの喪失を危惧し、人間と「こころ」
をかよわせる建築、人間のこころを育む建築を目指しました。その次世代に向けたメッセージ
は、グローバル化した今日、地球環境の保全が叫ばれる現代社会にあって、より一層示唆的な
ものとなっています。

その活動を振り返る本展では、1年間かけて調査した成果をもとに、原図や当時の写真、ス
ケッチやメモ、模型、映像などの建築資料188点を4つの視点から紹介し、生活環境の問題と
格闘し、生涯を建築家として生きた菊竹の根底にあった大胆な発想や思想の原点に触れたいと
思います。
 
特に本展覧会では、学生時代の設計競技の資料や若い頃の実測のスケッチ、晩年の構想に関
する資料の他、《スカイハウス》(1958)以前に設計された木造の増改築の計画《石橋文化
会館》(1956)や、とりかえ可能装置〈ムーブネット〉の発想のきっかけとなった《ブリヂ
ストンタイヤ殿ケ谷第一アパート》(1956)などの原図を含む大変貴重な資料を展示します。

また、菊竹氏の生前の映像資料や《国立京都国際会議場設計競技案》(1963)のメモやスケ
ッチからは、設計の三段階方法論〈か・かた・かたち〉確立に至る過程を知ることができます。
代表的な論考「代謝建築論」へとまとめられていく思想の端緒や、〈メタボリズム〉で発表し
た思想・造形に至るまで格闘した過程を今まで未公開だった多くの建築資料からたどることが
できます。三段階方法論〈か・かた・かたち〉の示す構想から形態までを示す多くの建築資料
に触れることにより、ひとりの建築家として生きた菊竹清訓氏のこころがわかるところが本展
覧会の見どころとなっています。


事業担当責任者|早稲田大学創造理工学部建築学科教授 古谷誠章
問い合わせ先|早稲田大学創造理工学部建築学科助手(担当:斎藤信吾)
exhibition@furuya.arch.waseda.ac.jp

早稲田建築合同クラス会2014の報告

早稲田建築合同クラス会2014のご報告


「早稲田建築合同クラス会2014」が10月18日(土)に開催されました。

ご来場いただきました方々、チケット購入にご尽力いただいた方々、準備の段階から
ご協力いただいた皆様のお陰で盛大に催す事が出来ました。
心よりお礼申し上げます。

当日は晴天に恵まれ第一部より沢山の方々にお越しいただきました。

第1部(講演会・パネルディスカッション・チャリティ演奏会)、第2部(懇親会/けんち
く体操・応援部&グリークラブによる校歌斉唱)、そして苗S63委員長より、初の平成
卒の苗H01委員長へバトンタッチの様子は、合同クラス会のページでご覧ください。

合同クラス会のページのURLは以下です。
http://waptoumon.com/2014/2014.html

11/17(月) 桂純二さん講演会のご案内

11/17(月) 桂純二さん講演会のご案内
『東日本大震災 復興に係る建設業界の取り組みとその問題点』
講師:桂純二

日時:11月17日(月) 18:00~20:00
【開催場所:早稲田大学西早稲田キャンパス57号館201教室】
(※会場が62号館から上記57号館201教室に変更になりました※)
参加方法:申し込み不要。参加費無料。

11月17日(月)に大成建設の元東北支店長の桂純二氏による講演会『東日本大震災~復興に係る建設業界の取り組みとその問題点~』が行われます。
講師の桂氏は1950年1月17日生まれ。1973年3月早稲田大学理工学部建築学科卒業、1975年3月同大学大学院理工学研究科建設工学科卒業ののち、1975年4月、大成建設入社。恵比寿ガーデンプレイスや味の素スタジアムなどの現場管理を担当されました。2009年4月執行役員東北支店長に就任され、2011年3月東日本大震災に遭遇。現地対策本部長として発災時の初期対応から、様々な復旧・復興事業に関わられました。2013年4月に常務執行役員東日本復興本部長に就任、2014年4月顧問に就任。がれき処理や高台移転事業に至るまで、また除染や福島第一原発廃炉への取り組みなど、多岐に渡る事業に携わっておいでです。

講演会では数多くのエピソードを交えて、現場でしかわからない震災の状況と復興への課題などを語っていただきます。震災発生当時から現在まで継続して携わってきた視点からお話が聞けます。

震災から3年8ヶ月が経ち、記憶も薄れてきている今、当時の被災状況と現在の復興状況、今抱えている本当の問題は何かを認識する必要があるのではないでしょうか。復興に向けて自分は何が出来るのか考え、行動するきっかけになれば、また避けることのできない全国各地での震災に向けてどう備えるべきか、各自が意識的になることができればよいと思います。

(事業委員会学生委員 藤井真麻)

11/1(土)・2(日) 【20の建築家展 】開催のご案内

【20の建築家展 】
2014年度理工展にて、早稲田を卒業した著名な建築家の作品・図面を収集し、見開きA2版の大きさに装丁した「稲門建築ライブラリー」の図集を、はじめて全てを一般公開します。ぜひ、20の建築家の原寸大の設計図面に触れてみて下さい。

14年11月1(土)・2(日)
時間 :10:00-17:00 
場所 :54号館201教室
主催 :事業委員会 学生委員

「稲門建築ライブラリー」とは......
早稲田を卒業した著名な建築家の作品について図面を中心とした資料を収集し、A2版の大きさにまとめて編集したものです。

稲門建築会(早稲田建築のOB・OG会)の30周年事業として1984年に始まり、2014年時点で20名の方々の資料が整備されています。
集められた資料は永く稲門建築会に保存され、早稲田建築OB・OGならびに学生を対象として、建築界に大きな影響を残した建築家の足跡を、身近に触れてもらうことを目的としています。

このために、資料は学生の一番身近な場所に設置され、建築家に関する特別講演会を開催することを通して早稲田建築OB・OGとの交流も生まれるような機会を創出し、タテの繋がりを深めると共に、建築をより深く理解していくための手段になる、というのが当初の理念でした。

しかしながら、開始から30年が経過した現在で、「稲門建築ライブラリー」の存在は建築学生にほとんど知られておりません。また、いままで、「稲門建築ライブラリー公開懇談会」にて各建築家のライブラリーを公開してきましたが、20名の建築家を一挙に公開する機会は一度もございませんでした。

そこで、私たち稲門建築会事業委員会学生委員は次世代に伝える手段を構築すべく、「稲門建築ライブラリー」30年間の蓄積をこれにてはじめて一般公開致します。

【稲門建築ライブラリー】リスト
第1輯  佐藤武夫    第11輯 村野藤吾
第2輯  宮本忠長    第12輯 菊竹清訓
第3輯  今井兼次    第13輯 木島安史
第4輯  吉阪隆正    第14輯 渡邊洋治
第5輯  安東勝男    第15輯 明石信道
第6輯  池原義郎    第16輯 内藤多仲
第7輯  阪田誠造    第17輯 井上宇市
第8輯  武  基雄    第18輯 松井源吾
第9輯  内井昭蔵    第19輯 鈴木 恂
第10輯 穂積信夫    第20輯 早川邦彦

(事業委員会 学生理事 内田将大)

9/16 シンポジウム企画 『「早稲田建築」の覚醒』のご報告

9月16日(火)、シンポジウム「『早稲田建築』の覚醒」が開催されました。本講演には、早稲田大学教授中川武氏を司会に、早稲田大学建築学科出身である建築家 内藤廣氏と日建設計常務執行役員、設計部門統括 亀井忠夫氏の両名をパネリストとしてお迎えし、「早稲田建築」のこれまでと今、そしてこれからについて語って頂きました。
参加者はOBの方々や早稲田の先生方に学生64名を加え、合計で137名を数えました。我々のアイデンティティー自体を問うこのテーマには多くの方に興味を持って頂けたようで、57号館の大教室が幅広い世代の顔ぶれで埋まって行く様子は非常に印象的でした。

はじめに経歴として、両氏はご自身の学生時代と、携わられてきたプロジェクトについて紹介されました。亀井氏は「クイーンズスクエア横浜」「虎ノ門金比羅タワー」「議員会館」などを紹介され、人やモノ、資金や環境等、様々なものに折り合いをつけて「用に供する」設計をしてきたと強調されました。また、内藤氏は、氏の時代の学生生活に強く影響したという学生闘争や、教育者としての吉坂隆生先生の言葉を紹介されました。また、『形を最後に決めるのは勇気である』とした上で「草薙総合運動場体育館」「渋谷駅中心地区」「宮城県陸前高田市の復興計画」について語られました。特に東大の都市計画と早稲田の都市計画を並べた、『早稲田は今も健全野党でいられているのか』という痛烈な問いかけには、会場全体が引き締まるような雰囲気になりました。

次に、中川先生の「国家と個人の間を設計するとはどういうことか」、すなわち国家を担う立場の東大に対して早稲田がどうあるべきかという問題提起を起点として3名でのディスカッションが行われました。亀井氏は学内に多様なパーソナリティーを持ち、それらを受け入れる姿勢こそが早稲田建築“らしさ”なのではないかとし、『自由さや対応力』を早稲田の若い人材に期待すると述べられました。内藤氏は先ず東京大学工学部土木工学科に在籍した際の実感として、「国家を担う存在」として多くの責任を負うという自覚がある東大は、それゆえに人間個人への視点が足りないこと、その足りない部分を補完する立場として早稲田建築があると述べられました。
それから内藤氏は震災復興について言及されました。「素景」というご自分の提唱される概念から、『わずか10分のうちに失われてしまった自分の住んでいた場』、『放射能警戒地区ゆえに、そこにあるのに入れない我が家』といった従来の建築からは想像もつかない状況をとらえる試みを示されました。その言葉には、氏の人間に対する深い思慕のようなものを感じました。

最後に、参加者から三人のパネリストへ質問が寄せられました。そのうちのひとつに「早稲田建築」の定義についての質問がありましたが、内藤氏は間を置くことなく「人や建築に対する愛ではないか」とお答えになり、そういった早稲田建築の独特な思考方法がいろいろなモノやカタチを生むと述べられました。

優秀な組織労働者が求められる昨今に、一見、早稲田建築らしさを体現するパーソナリティーや思想の多様性は求められていないようにも見えます。しかしだからこそ早稲田建築にしか体現できない新しい価値や、見落とされているようなアプローチで社会の問題を解決することが出来るのではないでしょうか。今回は、早稲田建築の持つ可能性を再び確認するような、まさに「早稲田建築の覚醒」と言うにふさわしい講演会となりました。

(事業委員会学生委員 津島英征)

早稲田建築合同クラス会2014

★いよいよ10/18(土曜日)開催★
早稲田建築合同クラス会 2014 チケット絶賛販売中!!
もうすぐ開催!お楽しみに!
いよいよきたる10/18(土曜日)に開催します。
皆さん!スケジュールには書き込んでいますか?

今年もいよいよ毎年恒例の「早稲田建築合同クラス会」が10/18(土曜日)に開催されます。苗63実行委員よりお知らせです。
詳細は右記でもご覧いただけます。http://waptoumon.com/2014/2014.html

講演会では現役学生によるバイオリンの演奏・懇親会では応援団のパフォーマンス・けんちく体操などご家族にも楽しんでいただける内容となっております。

■チケット申し込み方法
チケット代(懇親会参加費) 5,000円(学生、家族同伴無料)
waseda2014arch@gmail.com
上記アドレス/北園・山口(苗63)までご連絡のうえ以下の口座にお振込み願います。
【振込先】
三井住友銀行 高田馬場支店 店番号273
普通 口座番号 4795897
早稲田建築合同クラス会2014 実行委員長 北園徹
※グループでの参加も大歓迎です。
※もちろん当日のご購入も可能ですのでお気軽にご参加ください。


<テーマ>
「これからの半世紀 何をつくり 何をこわすのか」
今年の「早稲田建築合同クラス会」では今後の社会づくりのアプローチをどう考えたらよいか、建築には何がもとめられるのか考えてみたいと思います。

■ 開催日  2014年10月18日(土曜日)

■ 第一部 講演会・演奏会「50年の可能性を考える」
午後2時~4時 57号館201教室
今年の講演会では、社会システムデザインのシンクタンクを経営され、日テレの番組にも出演されている科学技術ジャーナリストの赤池 学先生と、我らが母校の中川 武先生をお招きし、建築の「外」と「内」からこれからの社会づくりと建築を考えていきたいとおもいます。
2020年にふたたび東京オリンピックが開催されることになった今、これからの社会の「夢」をデザインする、建築にもとめられることを考えます。

これからの社会づくりを考えるきっかけとなる、《東北大震災の復興》を象徴する「TSUNAMIヴァイオリン」によるチャリティコンサートも行います。
復興への思いの詰まったヴァイオリンの調べにぜひ耳を傾けてください。

● 講演会
・ 赤池 学 氏 (ユニバーサルデザイン総合研究所所長・科学技術ジャーナリスト・早稲田大学環境総合研究センター客員教授)
「ランドシャフトから探る社会デザイン」
・ 中川 武 教授 (早稲田大学理工学術院教授)
「建築における前アジア的古代性の現代的意義」
・ パネルディスカッション
「2020年の先を見据えた社会デザイン」
赤池 学 氏 × 中川 武 教授
コーディネーター 上田康裕(苗63) 小西恵(苗63)

●チャリティ演奏会
・ TSUNAMIヴァイオリン演奏 (早稲フィルOG・OB)
(当日 TSUNAMIヴァイオリン基金」への寄付を募ります。
http://classic-for-japan.or.jp/tsunami_violin/about/ )

■ 第二部 懇親会「50年に思いを馳せる」
午後4時30分~6時30分
レストラン「馬車道」 懇親会費 ¥5,000
懇親会のイベントは、早稲田建築の63年卒業の米山氏による、みなさんご存知の「けんちく体操」です。「早稲田建築合同クラス会」のための特別バージョンです。
どうぞお楽しみに。

恒例の校歌・紺碧の空の斉唱は、建築学科在籍中の早大応援部主将仁熊君をはじめとして、応援部・チアリーダーが行います。
年に一度の「早稲田建築合同クラス会」。今年は50年に思いを馳せつつ楽しんでください!

●イベント
・ けんちく体操 建築史家 米山 勇(苗63) http://kenchiku-taiso.com/member.html
・ 校歌・紺碧の空 斉唱 早大応援部 チアリーダーズ 代表委員主将 仁熊佑太(建築学科4年)

★♪★
皆様の早稲田時代はいかがでしたか?わたくしごとですが筆者(放生)の子供はこの冬に大学受験をする高校三年生です。
自分が大学を決めたとき、建築の道に進むと決めたときのことを思い出します。
縁あって同じ稲門建築に学んだ仲間たちとクラス会の準備を通じて交流が深まり、改めて思うのです。皆、素敵な人たちばかり!
子供も進路決定の時期です。後輩になるかどうかわかりませんが『ここで学んでよかった』とおもう母の姿をみて子供には受験勉強がんばってほしいです。
お子様が早稲田大学を受験検討されているのであればご一緒していただくのも楽しいかもしれませんね。

ホームページをごらんの方々にお願いです。お友達にお知らせし、一緒に行こうと誘ってください。そして皆さんでここで学んでよかった!の気持ちをもちかえっていただきたいのです。

実行委員一同、皆様のおいでを心よりお待ちしています。

合同クラス会2014実行委員(苗63)

八幡における村野藤吾の建築作品について歴史的価値を考える

《九州支部からのお知らせ》
           
福岡県北九州市八幡東区の近接したエリアに村野藤吾の作品が三つあります。どれも村野先生らしい味わいのあるデザインですが、残念ながら存続の危機に頻しています。市民を対象に、これらの三作品の歴史的価値、そして八幡の都市構造に与えた意味を検証する場を企画しました。

(市民公開シンポジウム)
日 時: 平成26年10月19日(日) 12:30~16:00
会 場: 九州国際大学KIUホール
開 催: 日本建築学会九州支部歴史意匠委員会
共 催: 稲門建築会九州支部
後 援: (公益法人)日本建築会家協会九州支部JIA,(公益法人)福岡県建築士会、九州産業考古学会,九州国際大学清水研究室

1. 見学会 12:30~13:30 
   集合時間:12:30 (JR八幡駅南側コンコース)
   見学建築:八幡市民会館,八幡図書館,福岡ひびき信用金庫本店(いずれも村野藤吾の作品)

2. シンポジウム 14:00~16:00 
  パネリスト 
     尾道建二(九州共立大学) 
     中川 武(早稲田大学)  
     松隈 洋(京都工芸繊維大学)

3. 懇親会 18:00~ 
   稲門会員のみで福岡にて開催します。(会場未定)
   遠方から参加される方には宿泊のお世話をいたします。

※参加および宿泊希望の方は10/17までに下記へ連絡ください。

問い合わせ:稲門建築会九州支部事務局 水野宏
     tel   :092-733-3831
     e-mail:hiroshi@h-mizuno.co.jp

9/16(火) 2014年度シンポジウム企画のご案内 『「早稲田建築」の覚醒』

2014年度シンポジウム企画
『「早稲田建築」の覚醒』
日時:9月16日(火) 18:00~
開催場所:早稲田大学西早稲田キャンパス57号館201教室
参加方法:申し込み不要。参加費無料。

9月16日(火)に『「早稲田建築」の覚醒』と題しまして、パネリストの中川武氏、内藤廣氏、亀井忠夫氏の三氏による講演とディスカッションで構成されるシンポジウムが行われます。
大学は夏季休暇中ではありますが、多くの皆様のご参加をお願い申し上げます。
(事業委員会学生委員 陶山春菜)

【シンポジウム内容】
■第一部 講演(60分):
「現代日本社会において建築は何をすべきか」
歴史的観点を踏まえ、自らの仕事などを通して上記テーマを語っていただく。(20分/人)

■第二部 パネルディスカッション(80分):
中川武氏を進行役として一部の講演内容を踏まえたディスカッション。

■パネリスト(敬称略):
○中川武(なかがわ たけし)(進行)
1994年よりバイヨンを中心としたアンコール遺跡の保存修復と広域遺跡調査(JSA団長、JASA共同代表)
1991年よりベトナム・グエン朝フエ王宮復原調査(ユネスコ・フエWorking Group)
2011年より早大東日本大震災復興研究拠点(自然文化安全都市研究所長)
2014年7月 早稲田大学教授、博物館明治村館長

○内藤廣(ないとう ひろし)
1976年早稲田大学大学院修士課程修了。フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所(スペイン)、菊竹清訓建築設計事務所を経て1981年内藤廣建築設計事務所設立。
2001~2011年東京大学大学院にて、教授、副学長を歴任。現在、東京大学名誉教授、総長室顧問。
主な建築作品に、海の博物館、安曇野ちひろ美術館、牧野富太郎記念館、島根県芸術文化センター、日向市駅、九州大学椎木講堂など。

○亀井忠夫(かめい ただお)
1977年 早稲田大学理工学部建築学科卒業
1978年 ペンシルベニア大学修士課程修了
1977‐78年 HOKニューヨーク勤務。
1981年 早稲田大学大学院(穂積研究室)修士課程修了、日建設計入社 。現在は同社で取締役常務執行役員、設計部門統括。
主な担当プロジェクトに、東京スカイツリー、議員会館、パシフィックセンチュリープレイス丸の内、さいたまスーパーアリーナ、虎ノ門琴平タワー、ミッドランドスクエア、クイーンズスクエア横浜、JTビル、日建設計東京ビル、TK南青山ビルなど。

【開催主旨】
 ・・・・・・稲門建築会に集まる私たちの中心には「早稲田建築」があります。

「早稲田建築」は早稲田大学に関係する建築関係者が目指す建築の総称です。勿論多様な考えがあると思いますが、大学名を冠にした建築を建築界の潮流として標榜する事例は他大学では、あまり考えられない、ということから私たちは考えたいと思っています。
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早稲田大学に建築学科を創設した佐藤功一は「都市美」を語りました。それは技術力を背景に近代化する建築や都市において、かつて尊重されてきた歴史や文化そして美学を大切にし、先端技術に目を向けながらもデザインする価値を大切にすることだと考えます。
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デザインとは単なる意匠という狭い意味ではありません。意匠と機能・技術は対立関係にあるのではなく、美しさを伴ったバランスを持つデザインによって、機能的にも技術的にも優れた建築として統合できるのです。早稲田建築は、デザインの意味をしっかりと理解した価値が高い建築として、機能や技術偏重の建築と一線を隔してひとつの潮流を形成してきました。
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しかし現代は、多様な価値観が乱立する状況にあります。その中では早稲田建築というカテゴリーも百花繚乱する価値のひとつとなり、その影響力の重要性は薄れました。しかし現在の大きな価値の潮流として、早稲田建築が受け継いできた価値観に、時代から近づいてきているように思います。早稲田建築を身体に染込ませている私たちは、真の日本の豊かさや、日本の都市の魅力を生み出すことに貢献しやすい時代ではないでしょうか。
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稲門建築会は建築を実践する社会人、そして大学で教鞭を取る教育者と、これから社会で活躍する学生たちと共に構成されます。この集団が早稲田建築と言う価値でつながり共に行動することで、今一度私たち自身が早稲田建築の価値を再確認したいと思います。そして稲門建築会は、単なるOB会としての交流団体に留まることなく、現在の都市や建築を変えて行く建築に想いを持つ集団でありたいと思います。
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そこで大学や社会で活躍する建築家の皆さんに参加いただくシンポジウム「早稲田建築の覚醒」を実施いたします。「早稲田建築の覚醒」、このメッセージは稲門建築会からの呼びかけです。早稲田に学び、早稲田OBとして建築や都市に関わっている方々が、何を創造し続けているか、その価値のありようを語り合いましょう。そうすることで、自ずと早稲田建築のアウトラインと私たち自身の課題や行方が浮かび上がってくると思います。

是非、多くの会員の方々に参加をお願いいたします。

(稲門建築会 事業委員長 関野 宏行)
 

事務局は8/1~8/20 夏季休業します

稲門建築会事務局は8/1~8/2は夏季休業期間のためお休みをいたします。
「普通の暑さの夏」から「猛暑」へ予報が変更されたと聞きます。
みなさまどうぞ体調に気をつけ、水分補給をしながら暑い夏を乗り切ってください。

5/16-5/17 鳥取・島根 菊竹清訓作品見学会のご報告

5月16日、17日の二日間にわたり、稲門建築会特別見学会として菊竹清訓作品見学会が行われました。参加者は学生とOB合わせて15名でした。
 見学会の一日目は鳥取県・境港マリーナホテルの見学から始まり、3月に改修工事が終わった村野藤吾氏の米子市公会堂、さらに槇文彦氏の古代出雲歴史博物館をまわって東光園に宿泊しました。二日目は出雲大社にて庁の舎を見たのち田部美術館を見学、島根県によって耐震補強改修工事が行われた旧島根県立博物館、島根県立図書館、島根県立武道館の三か所をまわり、最後に菊竹氏の晩年の傑作である島根県立美術館を見学しました。

 見学した作品の大半は建てられてから長い年月を経ていましたが、島根県立の旧博物館・図書館・武道館や村野藤吾設計の米子市公会堂などは耐震補強の改修がなされており、人びとに永く愛されている様を目の当たりにしました。

一方1964年に建設され、菊竹氏の代表作のひとつでもある東光園は、そのような改修等は行われていないようで損傷が激しい状態にあり、参加者の中からも心配する声が多く上がっていました。菊竹清訓建築設計事務所のOBである、稲門建築会理事の山崎一彦氏は特にこの状況を憂い、「名作の解体は回避できるか」と題した報告文を寄稿してくださいました。下記に掲載しましたので、ぜひご一読ください。

見学会の中で、建物の経年劣化にショックを受けていた参加者は少なくありませんでしたが、私個人にとっては東光園の吊り構造や出雲大社庁の舎の階段室のHPシェルなど、純粋にRC造を中心とした建物のかっこよさに惹かれることが多かったです。
また見学会が終わって改めて菊竹氏の『代謝建築論』を紐解いたとき、
「コンクリートについてどう考えるかは、つきつめると現代建築をどう考え実践するかに通じるものでなければならない」(上書籍より引用)
ということばにいたく感動しました。あのRCの作品群の生なましさは素材と徹底的に向き合い、時代を生き抜いた結果生まれたものであったのだと痛感させられました。

 最後に、各施設の管理者の皆様には見学を快く許可して頂いただけでなく、建物のかつての姿や現在の様子などの詳細も教えていただいたことをご報告します。特に島根県庁の山本大輔様には、二日目の島根県の作品群について愛情と情熱をもって半日以上も同行・ご案内いただきました。この場を借りて厚くお礼申し上げます、ありがとうございました。

(事業委員会学生委員 陶山春菜)

菊竹建築の視察報告(島根、出雲)
名作の解体は回避できるか

稲門建築会理事 山崎一彦(苗S44)

2014年5月16日、17日の2日間に亘り、稲門建築会特別見学会「菊竹清訓作品見学ツアー」を15名の参加者により実施しました。菊竹先生は早稲田建築の歴史上も特筆すべき巨星であることは皆さん異論がないところでしょう。先生は日本の建築界のみならず世界の建築界に「メタボリズム」や「代謝建築論」の建築論を発信して一世を風靡しましたが、一方でその作風は日本建築の歴史と伝統を現代建築に生かした独自なデザインを示していました。

私は1969年から1994年までの25年間菊竹清訓建築設計事務所に在籍し、デザイン担当副所長として先生を補佐してきました。今回の建築視察対象である島根県立博物館や図書館と出雲大社庁の舎やホテル東光園の建築は私が入所する以前に完成し発表された作品です。当時菊竹先生は早稲田大学の設計製図の講師であったことから、私は学部4年の夏に菊竹作品を見るため九州と山陰に旅行し、作品に感激して入所を決意しました。入所のその年に島根県立武道館の実施設計があり、私も図面を担当し断面図の一部を書いたことを思い出します。図面は変更に次ぐ変更を経て鉛筆の跡が黒光りする程推敲されました。断面図での特徴は、2階の体育館の屋根を支える巨大なトラス梁の架構デザインとキャットウォークに付属する5角錘の反射傘を持つ照明器具、そしてまるでジェットエンジンの如くの吊り下げられた空調機のデザインです。残念なことに現在は両方とも老朽化のため撤去されていました。建築平面形は隣接する図書館に軸を合わせて、45度のダイアゴナルに配置された壁柱構造であり、2階の床は無梁版の一種であるワッフルスラブが1階部分の天井デザインとして表現されています。

松江市中心部の3棟の菊竹作品は島根県の建築営繕課により既に耐震補強と改修が行われており、外観内装とも非常に良好に維持管理され、県民の建築遺産として大切に使われているようでした。

実は、私はこの視察旅行で約50年ぶりにこれらの菊竹作品を見ることになるため、建物の現状には大きな不安を抱いていました。菊竹作品に限らず、日本の戦後の建築は経済的、技術的にも不十分な時代に建設されたことからか、著名な建築でも次々と取り壊されています。中には建築学会賞を受賞した作品が数年後に解体される事例もあります。私が担当した上野不忍池のホテルKOJIMA(後にホテルソフィテルに改名)も、段状住居をモチーフとする30階建の高層ホテルで話題になりましたが、バブル経済の破綻を受け10数年でマンションに建て替えられています。このように日本では建築の価値が社会的経済的に正当に評価されない状況が続いていたので、島根県の維持管理の取り組みはとても貴重であり、ありがたいものでした。

一方、ホテル東光園など経年変化により問題が生じている建築がありました。視察団が宿泊したホテル東光園は、控え柱に支えられた大梁から客室階が吊り下げられた独創的な構造のホテルであり、外観のダイナミックな美しさは当時から非常に評価が高いものです。最上階のHPシェル屋根のレストランこそ営業されていませんが、4階部分の屋上庭園により客室階が宙に浮かぶ構造表現が魅力の建物は概ね健在で、細部のデザインは日本建築の伝統を彷彿させ、線の細やかな豊かな表情を見せています。コンクリートの肌は型枠目地によって,恰も木造の寺社建築の如くの迫力があり今でも見応えがあります。多くの人が菊竹作品の最高傑作と評するのも頷けます。しかしながら近年の法改正により耐震補強の期限が迫っており、オーナーの交代もあったため今のままでは取り壊しの可能性が高いそうです。免震や制震技術の適用など有効な補強方法の検討や、文化財指定等の現代建築保存の仕組みによる救済活動等が求められています。日本建築の傑作であるホテル東光園が今まさに危機に瀕していることを痛感しました。

更に、出雲大社庁の舎においても、コンクリートの劣化と雨漏りが見られ、長大スパンのポストテンションのコンクリート梁や、PCコンクリートの水切りルーバー等の補修が必要となっています。コンクリート打ち放しの表現は日本建築の特徴として引き継がれていますが、風雨に晒された厳しい環境は十分なメンテナンスが不可欠です。繊細で美しい建築表現は、耐久性を犠牲にしているのではとの反省がひとしおでした。

維持管理は一義的にはオーナーの責任ですが、建築学会や関係者、稲門建築会としてもこのような歴史的作品を後世に継承するために力を尽くせるのではないかと考えます。どのような支援が可能かについて、皆様のご意見を求めたいと思います。

視察の最後に、1999年竣工の島根県立美術館を訪問しました。この作品は菊竹先生の晩年の傑作であると思います。これまで培われた美術館建築の蓄積の上に、21世紀に向けた開放性や環境と調和する建築の新しい様式を提示された作品です。宍道湖畔の夕日の景観をテーマとし、県民が憩いの場として親しまれるだけでなく、世界の美術館として評価に値する名作となっています。当時70歳を超えたばかりの菊竹先生は、若い後輩スタッフを統括することで見事に設計されていることから、巨匠の建築家の力と才能は年を取っても大きな可能性を発揮できる証として感服しました。思えば、村野藤吾先生や、ブラジルでお目にかかったニーマイヤー氏が90歳を超えるまで現役だったのですから、菊竹先生も90歳や100歳まで新しい思想と建築を私たちに示し続けたに違いないと悔やまれます。日本の建築界をはじめ早稲田建築にとっても大きな支柱を失った悲しみを一層深くした旅となりました。

6月6日市川宏雄先生講演会のご報告

6月6日、早稲田大学理工キャンパスにて、稲門建築会 春の総会が行われ、世界の第一線で都市政策に関わる市川宏雄氏による特別講演を開催いたしました。
今回のテーマは、「2020東京オリンピック・パラリンピックで東京はどのように変わるか」。
現在日本国民の最大の興味の対象であるオリンピックに関連することであったため、これからの日本、東京を盛り上げていかなければならないという自覚を持つ学生22名を含む、総勢104名を動員する大規模な講演会となりました。

市川氏は都市工学出身でありながら政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本でも数人しかいない学際分野の実践者で職歴も多様です。国際的にも様々な国と関わっていますが、国内では東京都との付き合いは長く20年にもなるそうです。そのような東京の専門家とも言える市川氏による講演の大きなテーマは、高度経済成長期であった1964年の東京オリンピックとは異なり、今度は成熟国家の首都としての東京でのオリンピックであるということでした。それを端緒として、東京という都市の強みと弱点の分析、新しい産業が誕生する可能性、交通網がさらに発達していくことなど多岐にわたってお話しいただきました。
特に交通網の発達に関しては、品川-田町間の山手線新駅設立と周辺の開発、豊洲-住吉間地下鉄の開通、貨物線を利用した新幹線の羽田空港への乗り入れ、新虎通りのメインロード化計画、さらにはオリンピック後の東京-名古屋間リニア新幹線の開通など、実現化するものから提案段階のものまで広く紹介され、交通網と都市の形態、それに伴う経済動向は密接に連動しているということを強調されていました。

市川氏は講演中、「東京が世界で1番の都市でないとダメだ」と何度もおっしゃっていました。これには様々な指標がありますが、まずは最大の弱点である海外からの交通利便性の向上や様々な規制緩和などが必要であると聞き、日本もまだソフト面、ハード面の両方の面で可能性を持っているのだと、逆に前向きな気持ちにさせていただきました。

同時に、市川さんは、東京の1番の魅力は新宿・渋谷・池袋といった複数の核を中心とした分散型ダウンタウンを持つ多中心的な都市構造であるということだと強調されていました。これは複数の民間デベロッパーが個々のエリアごとに開発に注力していることも理由のひとつとなっているそうです。私個人としましては、この点がとても面白く感じ、これからは国の税金に頼らないポジティブな姿勢の地域に根差した開発が、成熟国家日本をさらに成長させてゆくための手段なのではないかと思いました。

今回の市川宏雄氏の講演会は、近い将来の東京、日本を具体的に考えるきっかけとなったと思います。会場に足を運んでくださった皆様にとっても有意義な講演であったと思います。
貴重なお話をしてくださった市川氏、そして参加者の皆様に心よりお礼申し上げます。


(稲門建築会事業委員 学生委員 藤井真麻)

6/16(月) 重村 珠穂さん 講演会のご報告

6月16日(月)18時30分より、建築のコンピュテーションの可能性に独自に取り組まれており、本校の非常勤講師でもある重村珠穂さんの講演会が開催されました。講題を「ビルディングプログラムから開く建築の可能性」としまして、コンピュータ技術を利用した建築デザインの将来について話していただきました。今回は、特に立ち見も出るほどの学生の積極的な参加が見受けられ、OBの方や早稲田の先生方を交えた参加者は95名を数えました。

はじめに、重村さんのご経歴として、ゼネコンで施工管理を務められた経験や、ハーバード大学留学時に体験したユニークな恒例行事などについて、たくさんの写真を用いて紹介されました。特に、大学の設計課題では自らの手で実物をつくることを重要視する姿勢があると同時に、3Dプリンターやレンダリングソフトを活用した技術が発展している様子は、日本の現状との差を感じました。

その後、米国における工事現場での深刻な品質低下を背景とした、Building Information Model(BIM)の開発経緯が紹介されました。BIMとは、車の生産システムを応用した建築設計・施工・改修に至る一連の流れを、一本のデータで管轄することのできる技術です。熟練工の人材不足への対策や、東京オリンピックをはじめとする大型工事における外国人施工者との共通言語としての活用など、今後の日本がアメリカと同じように抱えうる問題に対し、BIMの有効性を生かすことが急務であると感じました。さらに、BIMを支える簡単で扱いやすい最新のコンピュータープログラムは、意匠設計者と環境・構造設計者等の相互のコミュニケーションを円滑化し、各々が「考える」時間を多く確保できることに繋がるメリットがあるというご説明は、複雑化する建築デザインに対するすぐれたツールとなる可能性を感じました。

重村さんは、昔からたくさんのスタディを行い建築形態を決定したように、コンピュータでも模型でも「3Dで考える」という姿勢は変わらない、複雑なスタディを容易に繰り返せるソフトウェアは、良い頭脳ツールとなるのではないかと述べられています。また、誰がつくっても同じになる恐れのある3Dパースに対して、「個性をレンダリングで出せたら、勝ちです」と強く言われたように、コンピュータによる表現の方法論の模索が、今まさに行われているのではないでしょうか。

最後に、アルゴリズムデザインに埋没してしまうと、建築とアートの境界が曖昧な形態が生み出され、人や空間の存在を設計者が忘れてしまう恐れがあると重村さんは述べられました。それを意識した上で、新たな技術を広く柔軟に取り入れながらも、良い建物をつくるという信念を忘れずに「泥臭いコンピュテーション」を重ねることが、今後の設計者に求められる姿勢なのだと強く意識させられる刺激的な講演会となりました。
(事業委員会学生委員:内田将大)

6/16(月) 重村珠穂さん講演会のご案内

6/16(月) 重村珠穂さん講演会のご案内
『ビルディングプログラムから開く建築の可能性』
講師:重村 珠穂
アルゴリズムデザインラボ 代表取締役

日時:6月16日(月) 18:30~20:00
開催場所:早稲田大学西早稲田キャンパス55号館S棟2階第三会議室
参加方法:申し込み不要。参加費無料。

6月16日(月)に『ビルディングプログラムから開く建築の可能性』と題しましてアルゴリズムデザインラボの重村珠穂氏の講演会が行われます。
講師の重村珠穂氏は、1975年東京都生まれ。1998年3月慶應義塾大学総合政策学部卒、2000年3月に同大学大学院修了ののち、2000年4月に大林組入社。韓国・ソウル・アメリカなど育ちであることや、2004年のマサチューセツ工科大学大学院への留学、2010年のハーバード大学大学院への留学など豊富な海外経験をお持ちです。2012年3月からは株式会社アルゴリズムデザインラボを立ち上げ、現在にいたるまでコンピュータ技術を利用した建築デザインと環境設計のデザインエンジニアリング業務を中心に行っていらっしゃいます。

講演会では、近年世界の建築設計と生産現場でBIMをはじめとしたコンピューターの活用技術が急激に発展しているという背景を踏まえ、海外での実例や自身の仕事・体験を交えてコンピュータ技術から広がる建築の可能性について語っていただきます。

最近では、設計や現場のデータをすべてBIMで統括し管理するBIMマネージャーという職種も出てくるほど、建築設計・施工におけるコンピュータ利用は複雑で高度になりつつあります。計画初期から完成に至るまで、現在建築物が作られていく上でどのようにコンピュータ技術が扱われているのかを知り、またこの先それらとどうやって向き合っていくかを考えられるよいきっかけになればと思います。

(事業委員会学生委員 陶山春菜)

6/6(金)春の大会(総会・特別講演・懇親会)

来る6月6日(金)は稲門建築会【春の大会】です。

■通常総会■ 17:30~18:15 於/理工63号館2階03・04会議室
2013年度活動報告・収支報告他
2014年度活動計画・収支予算
2014年度役員選任
特別功労賞表彰  
藤本昌也氏(苗S35)現代計画研究所会長
村松映一氏(苗S38)元稲門建築会会長、元竹中工務店副社長

■特別講演 18:15~19:50
講 師:市川 宏雄氏 (苗47)/明治大学専門職大学院長
テーマ:「2020東京オリンピック・パラリンピックで東京はどのように変わるか」

2020年8月に東京で夏季五輪が開催されます。
あと6年と少しで開催されるこの世界最大の国際競技が東京をどう変えるのか。
そして国や東京都はどのように変えようと考えているのか。
私たち稲門建築会の会員は建築・建設に携わる方々が多いと思いますので、
大変興味深いテーマだと思います。
市川宏雄氏は今回の講演の概要を以下のように語ります。
「かつて1964年に開催された東京五輪では、モータリゼーションに対応すべ
き東京の基盤整備の根幹としての首都高速道路や環七の西側、さらには青山
通りが拡幅され、赤坂から渋谷までの新しい街の風景が出現しました。
さらにオリンピックに合わせて新幹線が東京から大阪までつながり、その後
の国土の発展に大きな影響を与えました。
今回は、前回とは異なり、成熟国家で開催される五輪です。
それでは何が違うのか、そしてどうなるのか。
この疑問に答えるために、経済波及効果、それによる東京の国際競争力の変化、
さらには、これからの時代に求められるコンパクト都市としての東京は、
五輪開催によってどのような姿が求められるのか。
そして、そのとき都心はどうなっていくのか、などの視点から説明します。
また、オリンピック後に開通するリニア新幹線は日本の国土構造をどう変える
のかについても言及します。」
!!!都市や建築に興味のある方々は是非お聞き逃しなく!!!

■懇親会 19:55~21:00 於:63号館「馬車道」
参加費:3,000円/人(会員及び会員家族)
        500円/人(学生)

5月19日 菊竹 雪さん 講演会のご報告

5月19日(月)18時30分より、グラフィックデザイナーであり、多摩美術大学等様々な大学で教鞭をとられている 菊竹雪さんの講演会が開催されました。今回も気鋭のデザイナーとあって、OBの方や早稲田の先生方に加えて学生の積極的な参加が見受けられ、参加者は50名を超えました。

講演は父である建築家・菊竹清訓氏が設計された自邸・スカイハウスでの生活の記憶や菊竹雪さんの経歴から始まり、海外、そして日本における「スーパーグラフッィクス」の実例を紹介されました。ここでスーパーグラフィックスとは、建築工事中の仮囲いに描く広告やプロジェクションマッピング等、まちの景観を作り出すグラフィックデザインのことを示します。菊竹雪さんはスーパーグラフィックスを『コミュニティを豊かにする環境グラフィック』であると位置づけられた上で、日常風景を全く異なる空間へと変えるその驚きが、生活者の美意識に働きかけていると述べられました。

その後、「講談社」「新丸ビル」「イタリア文化会館」の仮囲いなど、数多くの菊竹雪さん自身の作品を紹介されました。特に、「Direction,JRタワー」ではまちの有名地の方向を示す大きなサインを札幌駅プラットフォームの屋根に描き出すことで、これを見た人の認識と札幌という空間に対する意識をつなげるきっかけを生み出しています。数多くのプロジェクトの紹介からは、『人がいやがる空間に少し手を加えることで、いいなと思える景観にする』ことを主軸として取り組まれる姿勢を感じることができました。

菊竹雪さんに語っていただいたのは、建築とともに環境をかたちづくる手段であるスーパーグラフィックスのこれまでと今、そして切り開かれて行くこれからの方向を模索する姿勢でした。

講演の中でも菊竹さんが苦言を呈したように、商業色の強いデザインにあふれる日本のまちは、欧米に比べて景観意識が薄いと感じました。そんな現状に美的な価値観を吹き込んでゆくスーパーグラフィックスの有効性を認識すると同時に、景観をつくる側の責任を強く意識させられるような講演会となりました。
(事業委員会学生委員:津島英征)

5/19(月) グラフィックデザイナー菊竹雪さん 講演会のご案内

稲門建築会2014年度第1回講演会としまして、グラフィックデザイナーの菊竹雪さんをお招きし、講演会を開催します。
講題『スーパーグラフィックス』とは、ウォール・アートを含む巨大なグラフィックを示し、建築とグラフィックデザインを架け橋とする注目すべきムーブメントであるといえます。
講演会では、『direction JRタワー』『TN-Building』『Plant RP』等の作品を通じて、デジタルなデザインが現実風景のパースペクティブと融解する、"ヴィジュアル・コミュニケーションデザイン"の世界を語って頂きます。
入場無料・事前予約は不要となります、是非ご参加ください。



講演タイトル:
Supergraphics
――私はスーパーグラフィックスを、都市や建築のスケールで展開する、ヴィジュアル・コミュニケーションデザインであると捉えている。社会的・商業的・文化的な目的をもって、生き生きと存在するスーパーグラフィックスをご覧頂き、ヴィジュアル・コミュニケーションデザインの都市環境での役割や意義について考える。

日時:
2014年5月19日(月)
18時30分開演

場所:
早稲田大学西早稲田キャンパス63号館2階03室

講演者略歴:
菊竹 雪(きくたけ ゆき)
グラフィックデザイナー
首都大学東京教授
多摩美術大学客員教授

建築家・菊竹清訓を父とし、彼の設計による住宅「スカイハウス」で育ったアーティスティックな環境が、アイデンティティーを確立する源となっています。大学で建築を学び、卒業後は日本デザインセンターに勤務。その後イタリアの文化に引き寄せられ、ミラノのインダストリアルデザイナー、アンジェロ・コルテージ氏のもとでデザインの視野を広げ、1990年株式会社コンパッソを日本に設立。また、94年には文化庁派遣芸術家在外研修員として、英国の大学院大学ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)で既成概念にとらわれないグラフィックデザインを学んだ。現在、建築・空間・環境にかかわる、ランドマーク、スペース、車両、工事現場などのスーパーグラフィックから、VIデザイン、プロダクトデザイン、ブックデザインまで、ジャンルを超えたデザインを手がけている。
JAGDA新人賞、JCDデザイン優秀賞、SDAデザイン大賞、グッドデザイン賞をはじめ、海外では英国D&ADイエローペンシル賞、ブルネル賞等受賞。

2/4(火) 戸恒 浩人氏 講演会のご報告

2月4日(火)18時30分より、照明デザイナー 戸恒浩人氏の講演会が開催されました。強風雨天の悪天候の中、OBの方や、早稲田の先生方・学生の皆さんなど58名の多くの方々に参加していただきました。今回は気鋭の若手講演者ということもあり、学生の参加者が半数を超え、関心の高さがうかがえました。

講演は、『LEDが描きはじめた新時代の照明デザインの風景』というタイトルのもと、光のイメージを他者に想像させ、そのイメージをリアルな空間に作る照明デザイナーというプロフェッションについてのお話から始まりました。蛍光発光を主体とする照明からLEDへとツール変わったことで、デザイン手法も劇的に変化しており、昔は数多くのパースや模型でデザインを行っていたものが、現在では再現精度の高いCGシミュレーションでミリ単位の器具レイアウトを検討するになったそうです。LEDの出現による照明デザインの革新には目を見張るものがありました。

その後、戸恒氏の数あるプロジェクトの中から「武蔵野美術大学図書館」「台湾タワー」「ICCタワー」など7つの作品が紹介されました。
特に、「東京スカイツリー」では、2つの光「粋」「雅」の由来、コンペの秘話と苦労話が披露され、多くのメーカーを巻き込んで高性能と低コストを目指して行った技術開発競争が、LEDの急激な発展と普及のきっかけになったことは意外でした。
そして、「ICCタワー」では、超高層ビルの外壁全体を使ったイルミネーションの動画を紹介しながら、LED照明の描く未来の可能性を2つの点で述べられました。
建築を巨大なディスプレイにしてしまうほどの技術的な未来、そして、それが都市全体で発生したときに都市風景がカオスになるという恐れです。すでに氏のもとにも類似の演出を求める多くのオファーが世界から集まっており、それがすぐにでも実現できてしまうという状況に、戸恒氏自身は悩まれているようでした。

講演会の最後で戸恒氏が示されたのは、東京スカイツリーの最上部でご自身が撮影された、朝靄に沈んだ幻想的な東京の姿でした。自然と人工(照明)が生み出す新しい風景、時間とともにうつろう光環境をこれからのデザインテーマとして挙げられた戸恒氏のお話は、新しい時代を切り開く情熱と戦略、努力に満ちており、刺激的な講演会となりました。

・参考ホームページ:
「Hirohito Totsune at TEDxSeeds 2012」http://www.youtube.com/watch?v=r8CP04oc2DA

(事業委員会学生委員:内田将大)